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めまぐるしく変化するビジネスシーンにおいて、いちいち部下から報告を上げてとプレゼントの指示を仰いでいたのではスピーディーな意思決定ができません。 それよりも現場に権限を委譲して、ある程度のことは現場の判断で意思決定できるようにするべきです。そして、そのほうが現場のモチベーションも高まり、生産性も向上します。これがエンパワーメントを支持する人たちの言い分です。 しかし、心理学的にいえばこれはまったくのウソです。 まず、部下の自主性を高め、部下にあらゆる権限を委譲するなら、上司なんていらないことになります。部下を厳しく管理して正しい方向に導くからこそ上司としての存在意義があるのです。 権限を委譲して部下の自主性に任せる、というのはいかにも聞こえのいい話しです。しかし、こんなものただの理想論に過ぎません。「好きにやっていいよ」と自由を与えられながら、サボることもせず、自分を厳しく律しながら進むべき方向に進むことのできる部下なんて、そうそういないのです。 エンパワーメントに関連して、興味深いデータがあります。 オーストラリアにあるクイーンズランド大学の教育心理学者、ロビン・ギリースが220名の中学2年生を対象に行った実験データです。 まず、生徒たちを4人1組のグループに分け、生徒たちに自分が持っている知識(英語と科学)を打開に教え合いながら、グループ学習させる。 このとき、半分のグループには「教え合い」のルールについて「もっと協力しなさい」「相手の話を聞きなさい」「相手を尊敬しなさい」など、教師が助言を与えた。そしてもう半分は、生徒たちで自由にグループ学習させた。いわじ、エンパワーメントによって自由を与えたわけです。 その結果、教師が介入して助言を与えたグループのほうが、うまく互いに教え合い、しっかりと知識を身につけられることがわかりました。 これは多くの人が実感しているはずです。 それでは、ビジネスにおけるエンパワーメントはどうでしょうか。 小物の上司は「部下に嫌われないこと」を優先します。そのため部下に対して甘くなり、厳しく指導することもせず、やたらと一緒にお酒を飲みたがります。もちろん、部署の空気はダラダラしたものになり、もっとも成果が挙がりません。優しいことと甘やかすことは、まったく別物なのです。 一方、大物の上司は「部下に好かれよう」なんてことはまったく考えません。 部下を徹底的に管理して、高いハードルを設定し、尻を叩いてでもそれを越えさせます。その代わり、口うるさいほど助言を与え、仕事のノウハウを叩き込んでいきます。 部下としては苦しいかもしれませんが、きちんと成果を挙げることができるし、自分の成長が確実に実感できます。 そして結局、感謝し尊敬されるのは厳しいスパルタ上司なのです。 5年、10年経ったときに、多くの部下から「あの人の下で徹底的に鍛えられたから、いまの自分があるんだ」と思ってもらえるのです。大物の上司には、そうした伝説がつきものです。 |
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