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もし、社長室を設計するとすれば、どんな間取りが理想でしょうか。 まず部屋が広くて天井が高いのは当然として、南向きの部屋であることが大前提です。そして窓をできるだけ大きく(可能なら全面ガラス張りで)とって、その前に机と椅子を置きます。ちょうど、太陽を背負うような格好で座るように配置するわけです。 そして入口のドアは北側に作るのです。 こうすると、どうなるでしょうか。 社長に呼ばれ、部屋に入ってきた社員は光を背負った社長を見ることになります。面白いことに、これだけで社長のことを「すごい人だ」と思ってしまうのです。 心理学ではこれを「後光効果」と呼ばれます。後光とは、宗教画でお釈迦様やキリストなどの背後に指している光のことです。 背後から光がさしていると、その人が大きく感じられます。そしてなにより、眩しくて目がくらんでしまいます。 そのため、先の社長室に話を戻すと、社長が人を呼び出すのはもっとも陽射しが強い正午から午後2時あたりまでが最適でしょう。きっと社長室に入ってきた人は眩しさに圧倒されてしまうでしょう。 こうした演出が難しいシチュエーションでも心配する必要はありません。 部屋の構造上、光を背負うことが難しければ、とりあえず照明の真下に行くのです。 たとえばレストランやパーティー会場でも、そのフロアの中でもっとも明るいスポットを探し、いち早くそこに陣取ります。こうするだけでも、かなりの後光効果が期待できるのです。 マサチューセッツ州にあるブライダイス大学の心理学者、レスリー・マッカーサーは被験者にグループを組ませ、ディスカッションさせる実験を行った。このとき、椅子と照明は固定されています。 そしてディスカッション終了後、「グループの中で誰がもっともリーダー的存在だったか?」と質問していった。するともっともリーダー的と評価されたのは、照明がいちばんよく当たる席に座る人だったのです。 もちろん、照明がよくあたるからといって、その人の会話の内容が変わるわけではありません。それでも周囲から「リーダー的だ」と思われるのは、その人の印象が「映像」によって決まるからです。 光がよく当たるということは、それだけ見栄えがよくなるということ。そして、印象的な「映像」が記憶に残るということです。 そもそも、人は会話の内容なんてたいして覚えていません。 みなさんにしても「先週の会議を思い出してください」といわれたら、言葉よりも先に会議室の映像を思い浮かべるはずです。 そして、いちばん光が当たって、「輝いていた人」のことを「なんとなく強そうだったな」と錯覚してしまうのです。 いちばんいい席に座るのは誰か。誰が最高の後光効果を獲得するのか。 会議から商談、そして合コンまで、椅子のあるところはすべて、後光効果をかけた「椅子取りゲーム」が展開されているのです。
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